初代奥野一香について

 初代の奥野一香の駒は松尾某なる 人物が作ったと書きましたが、どの ような人物かは、東京の荏原に住ん でいたことぐらいしかわかっていま せん。
 彫りを見ると、ガツガツと荒い彫 りですが、切れ味は素晴らしく、俗 に言う「味のある彫り」です。彫り 埋めは少なくほとんど見ることはで きません。盛り上げは厚くたっぷり と漆を盛り、金龍からの流れか「江 戸駒」の形式を守っています。  奥野の駒の漆はズングリとした印 象を受け「野暮」だと言われること もありますが、この表現が実は「江 戸の粋」なのでしょう。長い間使っ ていると、だんだんとその落ち着い た良さがわかってくるような気がし ます。
 あと、奥野一香の駒の特徴といえ ば「面取り」でしょう。ほかの駒師 の駒と比べ相当に大きな面取りがほ どこされています。方法としては、 面取りカンナで表面と裏面を削って います。その後瀬戸磨きをし、駒の 角が相当に丸くなっているのが写真 上でもよくわかります。これが、駒 形を少し小さめに見せ、それによっ て、目の錯覚で字が大きくはっきり と見えます。